頭の形・治療について ④ 頭と顎のゆがみの関係は側頭骨に注目
頭の形やゆがみから、顎(あご)に症状が出る事は知っていましたか?
今回はゆがみと顎の関係に対しての見解を報告します。
◆顎のゆがみについて
顎のゆがみは、顔の上顎部と下顎部の位置関係がずれる事で「噛み合わせ」や「顎関節症」に繋がります。
例えば斜頭症では、顔の側面にある側頭骨が前方に押し出される為、下顎の位置が前に押し出されます。
下顎骨の収まる場所は側頭骨の関節窩。側頭骨の位置を正してあげないと、下顎骨の歪みが変わらない可能性が高くなります。
・青→の箇所が側頭骨の関節窩(かんせつか)、下顎骨はこの箇所を中心に動きます。
例)左斜頭症の場合
上から見た図、左前方に押し出される
・後頭骨(紫色)が前に押し出されるから側頭骨(オレンジ色)も同様の負荷が掛かる、結果的に下顎骨は右前方に回旋してしまう。
当院に来られている五歳の女の子、右側の斜頭症があり左方向の負荷がかかった状態です。
普段の寝る向きも左側に向く事が多い為か下顎も左→右に押される状態になります。
まだ5歳だとこれから成長段階で改善する可能性も十分ありますが、顎の位置関係は容姿に関わる為このような状態も早い時期からの治療で対応する必要があります。
次回は上顎の歪み、治療の考え方について報告します。
頭の形・治療について ③どんな考え方で治療をするのか?斜頭の仕組みと治療の考え方
赤ちゃんの頭の治療についてのお問い合わせで、必ず聞かれる質問は「どんな治療をするんですか?」と聞かれます。
あまり情報が無い治療の為か気にされる親御さんは多いかと思い、今回は治療内容について報告します。
◆頭の捻じれ「斜頭」はこんな状態
・頭の骨は元々決められた位置にあります、しかし赤ちゃんの頭は非常に柔らかい為同じ向きで長時間横向きになる事で頭の位置が捻れてしまいます。
例えば出産後の斜頭は寝る向きによって簡単に変わってしまう結果起こり得る症状です。
上記の図は左横向きに寝た場合に起こりえるパターン。
➀左の側頭部は前方に押し出される為、絶壁状態になる。
②左の前頭部も前方に押し出される為、左凸になる。
③右頭部(全体的に)は左の向きを相殺する為、後方に捻じれる。
斜頭ではこのように左右異なる捻じれのストレスが常時掛かる状態とも言えます。
その為、捻れた・歪んだ頭を戻すには一つ一つの骨の位置を確認して元の位置に戻る刺激を加えます。
◆当院での治療法~歪みの改善法~
・骨の位置、可動性を一箇所ずつ確認する
→骨の位置を確認します、斜頭では左右の位置関係が僅かながら異なる状態の為、一つ一つ骨にコンタクトをして確認をします。
・骨、縫合、泉門の「硬さ、密度」を確認する
→頭全体の中で、触診をすると特定の箇所だけ硬さ、張り、出っ張り等見られる場合があり、これらの箇所には僅かな力で緩めます。
密度が高い、とは骨自体に局所的に「小石がある」ような硬さが時折見られます。この状態では骨自体が緊張して、不快な症状を引き起こします。
例えば、いつも泣いている、癇癪がある赤ちゃんはこの類のケースかもしれません。
・骨、硬膜を通じて矯正する
→頭骸骨と頭の中にある硬膜は繋がっている為、頭の歪み=硬膜の捻じれ と捉える事が出来ます。
側方の断面図
硬膜は脳全体を包みこんで、更に頭蓋骨の内面と繋がっています。
側方の断面図 その2
硬膜と頭蓋骨は重なっている形状です。
これらの硬膜が呼吸につられて僅かに動くため、頭部全体を包み込むようにして可動性を確認します。
◆実際の治療はこんな雰囲気
触れる、包み込む様な治療が中心です。
以前はお子様が泣きながらでも治療していましたが、最近では大人しくなった状態で治療する様にしています。
泣いた状態だと、興奮している為身体が硬くなる傾向となります。その状態では治療の結果が出難いと判明(当院の見解!)、落ち着いた状態で治療をする方針です。
赤ちゃんの頭の矯正・治療は、やはり早ければ早いほど結果が出る治療となる為、出産後2ヶ月くらいからやる事をお勧めします。
もちろん、4.5歳のお子様も通院されており絶対治らない訳ではありません。
より早い時期の方が骨が柔らかい状態なので、気になったら早めに取り組んでいきましょう。
乳幼児の頭の矯正 ~症例2 0歳の女の子 絶壁のパターン
・?患者様
4ヶ月の女の子
・??お母さんの悩み
絶壁+短頭
・いつから気になる?
産後1ヶ月〜
・出産情報
帝王切開で初産
当院に来られた理由は、友達が見ても分かるくらい頭の形が歪んでいて心配された為でした。
治療当初は頭の形の歪んでいる状態が一目瞭然で分かる位の状態でした。
治療を続けて3ヶ月半、現在はこんな形まで変わりました?♂️
治療中でも良く寝てくれる、可愛い患者様?
もう少し様子を見ていこうね。
治療中の雰囲気です。
ぐっすり寝ながらの治療?
頭の形・治療について②子供の頭は何歳まで形が変わるのか?骨の成長から推測
先日お伝えした頭の治療について、今回はもう少し細かくお伝えします。
◆乳幼児の頭はどんな状態?
成人の骨とは違い、まだ骨同士が固まっておらず空間があります。
ここは6箇所あり「◯◯泉門」と呼びます。
これらの箇所は大体の固まる目安の時期があります。(個人差はあります。)
①前側頭泉門→1ヶ月〜12ヶ月
②大泉門→1年半〜2年
③後側頭泉門→1ヶ月〜12ヶ月
④小泉門→約1年
以上の事から、生後1ヶ月から遅くとも2歳までに泉門自体は閉じてしまいます。
◆2歳以降は頭の形は変わらないか?
上記に挙げた泉門は2歳頃までに閉じてしまいますが、他の箇所はまだ成長過程で変わる可能性があります。
縫合(ほうごう)と骨です。
骨同士の噛み合わせたような縫合や骨自体はまだ癒合せずに成長する為、これらの箇所に刺激を加える事で骨の出っ張りや丸みが変わる可能性はあります。
・縫合とは
骨模型で色が変わるギザギザの箇所。
ここは3歳前後から徐々に固まる。
・骨自体は元々分裂している
例えば頭の後頭部にある後頭骨、成人では一つですが乳児では四つに分かれています。
・成人の骨
紫の箇所が後頭部の後頭骨
上から見た図
・乳児の出生時の後頭骨
後頭骨を上から見た図、赤矢印がまだ癒合していない4つの後頭骨
→後頭骨は4つに分かれて、年齢と共に癒合する。
頭蓋骨は各骨の癒合が始まる年代が6歳前後と言われています。
・◯◯泉門が癒合するのは2歳前後
・縫合が固まり始める時期は3歳前後
・骨自体が固まってくる年代は6歳前後
これらの事から遅くとも6歳前後迄に治療をする事で、頭の歪みを改善出来る可能性が考えられています。
次回は治療の考え方、実際に当院で行っている治療をお伝えします。
頭の形・治療について① 簡単なガイドライン
「頭の形は変わりますか??」
ここ最近、問い合わせが非常に増えている頭の形の治療。
当院にもSNSを通じて県内、県外からも毎週の様に問い合わせが来ます。
そこで今回は簡単に頭蓋治療について大まかなを報告します。
◆どんな治療法か?
頭蓋治療とは、頭の骨に対して刺激を加えて様々な効果が期待出来る治療法。
・骨の隆起(りゅうき)→突出している箇所
・縫合(ほうごう)→噛み合わせの箇所
・頚椎と後頭骨の関節付近
これらの箇所に、適度な力を加えます。
乳児の頭の形を矯正する力は、本当に僅かな力です。軽く頭を撫でる程度の為、実際親御様が受けて頂くと口を揃えてびっくりされます。(思った以上に力が弱いため)
◆どんな症状に対応出来るのか?
乳幼児に対しては
・頭の形を矯正 斜頭 絶壁 出っ張り
・泣き癖 癇癪
・吐き戻し 母乳やミルクを吸えない
・向き癖(いつも同じ向きを向く)
・斜頸
以上の症状の改善が期待されます。
◆いつからが理想か?
産まれてから成長の過程で、徐々に頭の骨が固まります。
頭部の骨は6歳までは速く成長をして、7歳以降は緩やかな成長をします。
頭の骨が固まるまでは、骨の位置が変わる為出来るだけ早い時期が望ましいです。
最近では、月齢2ヶ月のお子様も来院されています。
◆どれくらいの変化が見られるのか?
頭の形に関しては、「まん丸」が理想です。
しかし頭の形によっては、
・「ほぼ丸」
・凹みが膨らんだ
・凸が凹んだ などのケースもあります。
治療前 左前頭部に凹んだ形
治療終了後 凹んだ跡はほとんど見られず
◆期間はどれくらい掛かるのか?
まずは個人差があります。
例えば軽度の歪みであれば2.3回で終わるケースもあります。
しかし、状態によっては半年以上掛かるケースがあります。
これは歪みの程度が大きかったり、年齢が小学生になってから等頭の状態にもよります。
◆注意点
以下の状態は病院での治療をお勧めします。
・ヘルメット治療
頭部の歪みが明らかに強く、病院で勧められた際に使用するヘルメット治療。
ほぼ常時使用する為、形が戻りやすいが値段は自費治療になる為高額である(50万前後)。
・頭蓋骨縫合早期癒合症(狭頭症)
頭蓋骨縫合のどれか、またはいくつかが通常よりも早い時期に癒合してしまう病気です。
頭蓋骨縫合が早期に癒合してしまうと、頭蓋骨の正常な発育が阻害されるため脳を覆う頭蓋容積が狭くなり脳が圧迫される障害や頭蓋骨の変形が生じます。
頭蓋の変形は早期癒合が起こった縫合線(骨のつなぎ目)と密接な関係があり、例えば縦の縫合線が早めに塞がると頭の骨が横に成長できないため縦長の頭になり舟状頭(しゅうじょうとう)と言われる変形を生じます。
上記の矢印は縫合線が無く、成長の妨げになる。
縫合線の塞がり方で、頭が縦に短くなったり(短頭症:たんとうしょう)、斜めや三角になったり(斜頭症:しゃとうしょう、三角頭:さんかくとう)、上にとがったり(尖状頭:せんじょうとう)します。
(※一般社団法人日本形成外科学会の資料より抜粋)
◆まとめ
①治療法は頭の骨を中心に、触れる程度の力で矯正する
②頭の治療をする事で、向き癖や頭の形が変わる
③治療時期は早い時期が良い
④「まん丸」が理想 ほぼ左右対象が現実的
⑤治療期間は半年程様子を見ながら治療を継続する事が理想的
⑥病院でヘルメット治療を勧められる位変形が顕著な場合や、頭蓋骨縫合早期癒合症と診断された場合は必ず病院での治療をする。
当院での治療は、あくまでも病院で「経過観察をしましょう」と言われた時に、成長の過程を手助けする方法です。
以上の事から、乳幼児の頭部の形は変わります。
次回のブログでは、もう少し細かい情報をシェアします。